個人事業主の経費とは何かをわかりやすく整理【対象と上限の考え方】

帳簿

この記事のポイント

  • 経費とは 「事業の売上を得るために使った費用」 のこと
  • 経費にできるかは 事業との関連性を説明できるか で決まる
  • 自宅や車などプライベート兼用は 家事按分 で事業割合だけを計上
  • 金額の上限は原則ないが、10万円以上の物は減価償却 になる場合がある

1. 結論

個人事業主の経費(必要経費)とは、事業の売上を得るために使った費用のことです。仕入れや家賃、通信費、消耗品などが該当します。判断の軸はシンプルで、「その支出が事業に必要だったと説明できるか」の一点です。

逆に、生活費や事業と関係のない支出は経費になりません。この記事では、経費にできるもの・できないもの、プライベート兼用の按分、金額の上限の考え方までを整理します。

2. 必要経費の考え方

所得税では、事業所得は 「総収入金額 − 必要経費」 で計算します。必要経費になるのは、次の2つに当てはまる費用です(国税庁 No.2210)。

  • 総収入金額に対応する売上原価など、その収入を得るために直接かかった費用
  • その年に生じた販売費・一般管理費など、業務のうえで生じた費用

ポイントは、その年の売上に対応する分だけを計上することです。まだ売れていない在庫の仕入れなどは、売れた年の経費になります。

3. 経費にできるものの具体例

事業に関連していれば、次のような支出を経費にできます。勘定科目とあわせて整理します。

勘定科目 具体例
地代家賃 事務所・店舗の家賃、自宅兼事務所の按分分
水道光熱費 電気・ガス・水道(自宅兼用は按分)
通信費 スマホ・ネット回線・切手・宅配便
消耗品費 10万円未満の備品、文房具、印刷用紙
旅費交通費 電車・バス・タクシー、出張の宿泊費
接待交際費 取引先との会食、手土産、慶弔費
広告宣伝費 チラシ、Web広告、名刺の作成費
減価償却費 10万円以上のパソコン・車などの取得費(分割計上)

飲食代や車の関連費など、判断に迷いやすいものは個別記事でも解説しています(個人事業主の飲食代は経費になるか自動車保険を経費にできるか個人事業主向けに整理)。

4. プライベート兼用は「家事按分」で分ける

自宅で仕事をしている場合の家賃や光熱費、私用と兼ねるスマホ代などは、事業で使った割合だけを経費にします。これを家事按分といいます。

費目 按分の目安
家賃・光熱費 仕事に使う部屋の床面積の割合、使用時間の割合
通信費 仕事で使う時間・日数の割合
車の関連費 走行距離のうち事業で使った割合

割合は「合理的に説明できる基準」で決めるのがルールです。自宅家賃の考え方は 個人事業主が自宅を経費にする方法、賃貸・持ち家の詳しい按分は フリーランスの家賃は経費にできるか で解説しています。

5. 経費にできないもの

次のような支出は、事業に使ったお金でも必要経費にはなりません。

できないもの 理由
所得税・住民税 事業の費用ではなく個人の税金
国民健康保険・国民年金 経費にはならないが「所得控除」で差し引ける
事業主本人の給料 事業主への給与は費用にできない
生活費・私的な支出 事業との関連性がない
借入金の元本返済 元本は経費外(利息は経費になる)

国民健康保険や国民年金は経費ではありませんが、支払額の全額が所得控除の対象です。税金全体の位置づけは 個人事業主が払う税金の種類を一覧で整理 をご覧ください。

6. 経費に「上限」はあるのか

結論として、必要経費の金額に一律の上限はありません。法人にある交際費の枠(年800万円など)も、個人事業主には適用されません。事業に関連していれば、金額の大小に関わらず計上できます。

ただし「上限がない=いくらでも計上してよい」ではありません。売上に対して不自然に経費が大きいと、事業との関連性を問われます。あくまで事業に必要だったと説明できる範囲にとどめることが大切です。

なお、10万円以上のパソコンや車などは、買った年に全額を経費にできず、減価償却として複数年に分けて計上します(青色申告なら30万円未満まで一括計上できる特例あり)。

7. 経費は会計ソフトで管理すると楽になる

経費の判断そのものは上記の考え方で足りますが、日々の記録と集計を手作業で行うのは大変です。会計ソフトを使えば、次のように経費管理を仕組み化できます。

  • レシートの撮影・銀行やカードの連携で入力を自動化
  • 「消耗品費」「通信費」など勘定科目を自動で提案
  • 家事按分の割合を登録すれば、按分計算も自動

はじめての方は 個人事業主初心者向け会計ソフトの選び方 から、具体的な使い方は マネーフォワードの使い方を初心者向けに整理 を参考にしてください。

8. よくある疑問

10万円以上のパソコンは一度に経費にできる?

原則できません。10万円以上のものは固定資産となり、耐用年数に応じて減価償却します。ただし青色申告をしていれば、30万円未満は「少額減価償却資産の特例」で買った年に全額経費にできます(年間合計300万円まで)。

レシートや領収書がないと経費にできない?

証拠書類は原則必要です。電車代など領収書が出ないものは、日付・区間・金額・目的をメモや帳簿に残しておけば経費にできます。書類は原則5年〜7年の保存が必要です。

開業前に使ったお金は経費になる?

開業のために使った費用は「開業費」として計上でき、任意のタイミングで償却(経費化)できます。事業の準備にかかった費用は、領収書を残しておきましょう。

9. まとめ

経費とは、事業の売上を得るために使った費用です。事業との関連性を説明できるかが判断の軸で、金額の上限は原則ありません。プライベート兼用は家事按分で事業割合だけを計上し、10万円以上の物は減価償却で分けて計上します。経費の取りこぼしはそのまま税負担の増加につながるため、会計ソフトで漏れなく記録するのが近道です。

次に読むなら、

10. 一次情報(出典)

11. 経費の各論(目的別の関連記事)

費目ごとに、詳しい記事へ進めます。


※経費の判断は個別事情で変わります。記載は2026年時点の情報です。判断に迷う場合は 国税庁公式 の情報や税務署・税理士への確認も検討してください。

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