この記事のポイント
- 所得税は 「課税所得 × 税率 − 控除額」 で計算する(速算表を使う)
- 課税所得は 売上 − 必要経費 − 青色申告特別控除 − 所得控除 で求める
- 税率は所得が増えるほど上がる 累進課税(5%〜45%)
- 令和8年(2026年)分から 基礎控除が最大104万円 に拡大。最後に 復興特別所得税2.1% を上乗せ
1. 結論
個人事業主の所得税は、次の式で計算します。
所得税額 = 課税所得金額 × 税率 − 速算表の控除額
そして課税所得金額は、1年間の売上から必要経費・青色申告特別控除・所得控除を差し引いた残りです。手順を4ステップに分けて見ていけば、難しい計算ではありません。この記事では、令和8年(2026年)分の最新の控除額を使って、実際の数字で計算例まで示します。
2. 計算の全体像(4ステップ)
| ステップ | やること | 結果 |
|---|---|---|
| ① | 売上 − 必要経費 − 青色申告特別控除 | 事業所得 |
| ② | 事業所得 − 所得控除(基礎・社会保険料など) | 課税所得金額 |
| ③ | 課税所得金額 × 税率 − 速算表の控除額 | 所得税額(基準) |
| ④ | 所得税額 + 復興特別所得税(2.1%) | 納める所得税 |
会社員と違い、個人事業主は この計算を自分で行い、確定申告で申告・納付 します。順番に見ていきましょう。
3. ステップ①:事業所得を出す
まず、1年間(1月1日〜12月31日)の売上から必要経費を引き、さらに青色申告をしていれば青色申告特別控除を差し引きます。
- 売上:その年に得た事業の総収入
- 必要経費:仕入れ・家賃・通信費・消耗品など事業に使った費用
- 青色申告特別控除:複式簿記+e-Taxなどの要件を満たすと最大65万円
経費の取りこぼしは、そのまま税負担の増加につながります。自宅で仕事をしているなら家賃や光熱費の一部も対象です(個人事業主が自宅を経費にする方法)。青色申告特別控除の65万円を受ける条件は 確定申告で65万控除を受ける条件 で詳しく解説しています。
4. ステップ②:所得控除を引いて課税所得を出す
事業所得から、さらに 所得控除 を差し引いたものが課税所得金額です。所得控除には主に次のようなものがあります。
| 所得控除 | 内容 |
|---|---|
| 基礎控除 | 原則すべての人が対象(令和8年分は最大104万円) |
| 社会保険料控除 | 国民健康保険・国民年金の支払額を全額 |
| 小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済・iDeCoの掛金を全額 |
| 生命保険料控除・扶養控除など | 該当すれば加算 |
令和8年(2026年)分から基礎控除が引き上げられ、合計所得が少ない人ほど控除額が大きくなりました。所得税の基礎控除額は次のとおりです(489万円以下・67万円の区分は令和8年・9年分限定の特例加算を含みます)。
| 合計所得金額 | 基礎控除額(令和8年分) |
|---|---|
| 489万円以下 | 104万円 |
| 489万円超〜655万円以下 | 67万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 62万円 |
5. ステップ③:速算表で税額を計算する
課税所得金額が決まったら、所得税の速算表 に当てはめます。所得が大きいほど税率が上がる累進課税です。
| 課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円〜194万9,000円 | 5% | 0円 |
| 195万円〜329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
| 330万円〜694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
| 695万円〜899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
| 900万円〜1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
| 1,800万円〜3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
たとえば課税所得が300万円なら、300万円 × 10% − 9万7,500円 = 20万2,500円 が所得税額(基準)です。
6. ステップ④:復興特別所得税を上乗せする
最後に、所得税額に 復興特別所得税(所得税額の2.1%) を足します。これは令和19年(2037年)まで続く付加税です。
先ほどの20万2,500円なら、20万2,500円 × 2.1% ≒ 4,252円 を加えて、合計およそ20万6,700円(100円未満切り捨てで納付)となります。
7. 通しで計算してみる(具体例)
次の条件で、最初から最後まで計算してみます。
- 売上:600万円/必要経費:200万円
- 青色申告特別控除:65万円
- 社会保険料(国民健康保険・国民年金):年70万円
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| ① 事業所得:600万 − 200万 − 65万 | 335万円 |
| ② 所得控除:基礎控除104万 + 社会保険料70万 | 174万円 |
| 課税所得:335万 − 174万 | 161万円 |
| ③ 所得税:161万 × 5% − 0 | 8万500円 |
| ④ 復興特別所得税:8万500 × 2.1% | 約1,690円 |
| 納める所得税(合計) | 約8万2,100円 |
合計所得が489万円以下なので基礎控除は104万円。課税所得が195万円未満なので税率は5%で済みました。経費と控除を正しく積み上げるほど、税額は下がるのが分かります。
8. 会計ソフトを使えば計算は自動になる
ここまでの計算は仕組みの理解には大切ですが、毎年手計算するのは現実的ではありません。会計ソフトを使えば、日々の取引を入力するだけで 事業所得から所得税額まで自動で計算 され、確定申告書もそのまま作成できます。
- 売上・経費を入力 → 事業所得を自動集計
- 控除を画面の案内どおり入力 → 課税所得・税額を自動計算
- e-Tax連携で青色申告特別控除65万円の要件も満たしやすい
はじめての方は 個人事業主初心者向け会計ソフトの選び方 から、具体的な進め方は マネーフォワードの使い方を初心者向けに整理 を参考にしてください。
9. よくある疑問
住民税も同じ計算?
いいえ。住民税は所得税とは別に計算され、税率は 原則一律10%(所得割)です。基礎控除などの金額も所得税とは異なります。所得税の確定申告をすれば住民税の申告は原則不要で、後から納付書が届きます。税金全体の整理は 個人事業主が払う税金の種類を一覧で整理 をご覧ください。
予定納税とは?
前年の所得税額が15万円以上だと、その年の所得税の一部を あらかじめ前払い する予定納税の対象になります。7月と11月に納付し、確定申告で精算します。
赤字のときは?
所得がマイナス(赤字)なら所得税はかかりません。青色申告なら赤字を翌年以降3年間繰り越せます。詳しくは 個人事業主が赤字のとき税金はどうなるか整理 へ。
10. まとめ
個人事業主の所得税は、①事業所得 → ②課税所得 → ③速算表で税額 → ④復興特別所得税 の4ステップで計算します。令和8年分からは基礎控除が最大104万円に拡大したため、経費と控除を漏れなく積み上げることが、そのまま節税につながります。
次に読むなら、
- 税金の全体像: 個人事業主が払う税金の種類を一覧で整理
- 節税の具体策: 個人事業主の節税対策でおすすめの方法を整理
- 社会保険料の扱い: 国民健康保険は個人事業主の経費になるか整理
11. 一次情報(出典)
※税率・控除額・要件は改正されることがあります。記載は2026年(令和8年)時点の情報です。実際の申告前に 国税庁公式 の最新情報を確認してください。

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